日々の臨床で出会う疑問は、研究への入口

土田陸平
平成26年入局、令和3年3月博士課程修了

私は痛みの臨床研究を行っております住谷昌彦先生の下で、ペインクリニック及び緩和医療の臨床を研鑽しつつ、臨床で出会う疑問から研究テーマへとつなげ患者さんに直接還元できる事を目指した臨床研究を行いました。学位を取得したテーマは、疼痛の中でも難治性で慢性化しやすい神経障害性疼痛に関する、ヒトを対象とした臨床研究です。

1つ目は、磁気共鳴装置(MRI)を用いた画像研究です。ペインクリニックで出会う比較的頻度の高い腰下肢痛を主訴とする疾患の中に癒着性くも膜炎があります。しかし、癒着性くも膜炎の診断法は世界的に確立しておらず偽陰性となっている可能性が考えられました。私は腰痛MRI撮影の際に仰臥位と伏臥位で撮影し、重力に応じてくも膜下腔内を走行する神経の位置を比較することで、その病態である癒着による神経の可動性低下を可視化することに成功しました[PAIN Practice 2020; 20: 34−43. (doi:10.1111/papr.12822)]。今後は、この画像所見とともに癒着性くも膜炎の診断基準の作成に取り組みたいと考えています。


2つ目は、がん性疼痛の中でも頻度の高い化学療法誘発性末梢神経障害(CIPN)を遺伝学的アプローチにより、その発症に密接に関わるリゾフォスファチジン酸受容体(LPAR)の遺伝子多型の候補を2つ発見しました[Br J Anaesth 2021;127:e43-e46. (doi: 10.1016/j.bja.2021.04.014.)]。化学療法施行時にこの遺伝子多型を検査することでCIPN発症や重症化の予測マーカーとすることができる可能性があります。また、当教室の桑島先生が発表されている臨床研究で、神経障害性疼痛を有する患者さんの髄液中LPAの濃度が疼痛強度と強い相関を示すことと合わせますと、LPAシグナリングが神経障害性疼痛の発症と重症化に関わっていると言えます。私はこれまでに術後痛の遺伝子多型解析から新規鎮痛薬候補を探索する研究に取り組んだ経験[Life (Basel) 2020; 10: 92. (doi: 10.3390/life10060092.)]があり、今後はLPAシグナリングに注目した神経障害性疼痛の病態解明と新規治療薬の開発研究にも取り組んでいきたいと考えています。


痛みを疾患として捉え、一緒に研究しましょう!

様々なアドバイス。視野の広がる体験

 瀬戸富美子
日本医科大学卒業後、東大病院で初期研修。
平成27年入局、現在大学院1年生。

私は東大麻酔科研修プログラムで専門医取得後、現在大学院1年です。研究活動と臨床業務(主に手術麻酔)に従事しています。

麻酔科というと手術室での全身麻酔のイメージが大きいと思います。まずは様々な手術の麻酔を経験することが大事です。その後サブスペシャリティーを突き進む進路もありますが、その中でも私は麻酔科学教室で基礎研究を行っています。臨床の場で得た経験を、違う視点でも学んでいきたいと考えたからです。

研究室に入り、まずはマウスの飼育から実験手技などを学習しました。現在は、今後の実験計画を組み立てているところです。麻酔科学教室なので、臨床の場で経験した病態を解明する実験を行います。ですが、それを知るためには様々なテクニックが必要です。麻酔科学教室にはサポートしてくれる技師の方もいます。大学院を卒業した先生方も多く在籍していますので、アドバイスをもらえます。また現在は留学生も在籍しているので、様々な意見を聞くこともできる環境です。

臨床業務も並行して行っているため、慣れるまで時間がかりました。ですが、今後長い医師人生の中で一旦視点を変える機会を与えていただき、臨床医としても視野が広がっていくと思います。

ぜひ一緒に頑張っていきましょう!